by sakashita
ここでは、広く使用されている翻訳支援ツール、特に見積りに大きく関わる翻訳メモリ (以下、TM) について紹介いたします。私たちがどのようなものを使用しているかを知ることで、実は翻訳を依頼する側のコスト削減につながります。翻訳を依頼する量、方法、スケジュールも選択肢が増えるのではないでしょうか。
TM の設定内容でコストが変わる! (3/4)
今回は、フィルタの設定について説明します。前回説明したフィールドの設定と組み合わせて使用すると、優先して使用する訳文を TM から簡単に選択できるようになります。また、どのようにコストに影響するかについても見ていきましょう。
・ フィールドの設定 (前回のおさらい)
フィールドには、[テキスト フィールド]、[属性フィールド]、[属性値] があります。これらのフィールドにはプロジェクト名や製品名を入れて、登録されている分節を分類することができます。
今回は [属性フィールド] と [属性値] を使用して、フィルタを設定してみようと思いますが、[テキスト フィールド] でも同様の処理が可能です。
・ フィルタの設定
ある状況を想定してみていくとわかりやすいので、今回は早速例をあげます。次のような状況を思い描いてください。
製品 CBX のバージョン 1.0 とバージョン 2.0 があり、製品マニュアルはすでに 1 度翻訳されています。翻訳時には TM を 1 つだけ用意し、両方のバージョンで共通の TM を使用しました。今回、この製品のバージョン 1.0 とバージョン 2.0 の両方の製品マニュアルをアップデートすることになりました。ただし、製品 CBX バージョン 1.0 では GUI のローカライズが行われていないため、製品マニュアルでは、GUI を英語のままにする必要があり、一方 CBX バージョン 2.0 では GUI のローカリゼーションが行われているため、GUI を日本語にする必要があります。
TM には、下図のように属性フィールド「Version」には「1.0」と「2.0」が設定されています。
翻訳は次のように登録されています。
この状況を踏まえて、CBX バージョン 1.0 の製品マニュアルのアップデートを行う場合、次の 3 種類の設定ではそれぞれどのように解析結果が異なるのかについて確認していきましょう(解析の説明はこちら )。解析結果のマッチ率を使用して単価を設定している場合は、この解析結果が直接コストに影響します。
1. フィルタの設定を行わない
2. フィルタの属性値を 「Version」フィールドの「1.0」に設定
3. フィルタの属性値を 「Version」フィールドの「2.0」に設定
ここでは、わかりやすいように、解析画面を使用せずに、1 文「Click Finish.」だけを取り上げて、Workbench でマッチ率を見てみましょう。この文はバージョン 1.0 にも 2.0 にも出現し、今回のアップデートでも変更されていません。
フィルタの設定画面は次のようになっています。設定すると画面下部の「現在の設定:」に設定内容が追加されます(下図は Version の「1.0」を設定した場合)。
では、早速 3 種類の設定をそれぞれ確認していきましょう。
1. フィルタの設定を行わない
フィルタの設定を行わない場合、Workbench でのマッチ率はどのようになるでしょうか。
同一の原文に対して翻訳が複数入っている場合にフィルタの設定を行わないと、検索時のキーとなるものがないため、下図のように Version による判別は行われず、どちらの翻訳も 99% のマッチ率として扱われます。つまり、解析結果も旧版に該当する文があっても 100% として扱われず、99% のマッチ率としてワード数(2 ワード)が加算されます。また、この設定で翻訳を進めると、翻訳者が Version 2.0 の翻訳を選択してしまい、混乱する可能性があります。
2. フィルタの属性値を 「Version」フィールドの「1.0」に設定
次に「Version」フィールドにある属性値「1.0」をフィルタとして設定するとどうなるでしょうか。
属性値「1.0」をフィルタとして設定すると、Workbench は「Version」フィールドが「1.0」のものを最初に検索します。そのため、「Version」フィールドが「1.0」の翻訳で一致するものが見つかると 100% マッチとして扱われ、「2.0」の翻訳は属性違い(ここでは 98%)として扱われます。つまり、解析結果には 100% のマッチ率としてこの 2 ワードが扱われます。
3. フィルタの属性値を 「Version」フィールドの「2.0」に設定
「Version」フィールドにある属性値「2.0」をフィルタとして設定した場合は、1.0 に設定した場合と逆になります。「Version」フィールドが「2.0」の翻訳が 100% マッチになります。
上記 3 種類のマッチ率から、CBX バージョンごとにフィールドの設定を変えて解析を行うと、正しいマッチ率が算出され、また 1 つの TM にさまざまなバージョンの翻訳を登録しておくことができます。
お客様ごとに 1つの TM のみを使用すると、各バージョンで翻訳の一貫性を保つことができるほか、アップデート時にいずれかのバージョンの翻訳が流用できるため、コストの削減と時間の短縮につながることもあります。なぜなら、お客様の製品は連携することが多く、共通部分も多いことがよくあるからです。
同じお客様でも TM をプロジェクトまたはバージョンごとにそれぞれ用意すると、解析時には、各バージョンを別々の TM を使用して解析することになり、各バージョンのアップデートで同じ文(分節)が追加された場合でも、「繰り返し」としてワードカウントが加算されません。そのため、コストも高くなる可能性があります。また、テキストフィールドや属性を追加することにより、TM が複雑化するため、管理が困難になったり、解析時に誤った設定をしないように注意が必要になったりします。
シーブレインでは、お客様のニーズに合わせて、TM のマッチ率の向上に努めています。翻訳のご依頼前やご依頼時に、TM について相談していただくことも可能です。TM について疑問をお持ちの場合は、ぜひお問い合わせください。
次回は、複数訳文について説明します。
注) ここでは、英語から日本語への翻訳を中心に書き綴っています。英語から日本語への翻訳以外の場合は該当しないことがあります。
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